一人旅

旅は道づれ世は情け、とはよくいったもので物慣れない旅にはよい道づれがいたらそれは頼もしいし旅は楽しくなるだろうけれど、やはり始まりは旅立ちは、特に若いころは一人がいいと思っている。

私自身、初めての海外、初めての旅は一人だった。
一人夜着の便でインドへ向かった。ホテルの手配もなく成田空港でさえ初めてなのにその後のことをどうしていいかなんてわからないし、英語なんてyesとnoとthankyouくらいしか思いつかなかったわけで今思うとあまりに無知で本当にぞっとするような、笑ってしまうような、一生分の勇気を使い込んだ旅立ちであった。

旅立つ前日まで不安で不安でどうにかなってしまいそうだったけど誰かと行こうという考えは思いつかなかった。

子供の頃から自分のことは自分でしたい、という性格の持ち主であったし、自分の主張を通したいところで人に気を使うのも面倒だった。
自分の求めることが連れ添いと違うことが始めからわかってしまうのだ。

一人というのは本当に自由だった。
きっと友達や誰かと一緒だったら私は終始道づれとおしゃべりに講じて見るべきものの半分は見なかっただろうし、警戒心も不安になったときも道づれといたら半分だったろう。

もちろん本当は誰かと共有するというのはとても幸せなこと。
楽しい旅行は気のおける人と行くのが一番だと思う。

私はまっさらな状態で未知の世界に飛び込んでみたかった。
そして日頃自分を取り巻くものから離れて見えたものは異文化の中で暮らす人々とあらわになった自分の身の丈だった。

わからない、から始まって必要なことを全て自分でやらなくてはいけなかった。
苦戦続きのチャレンジ。その頃は不安や驚きも自分の見て見ぬフリをしてきた自分自身の現実も全部一人で請け負わないといけなかったけれど、今思えばとても価値ある時間だったと言うしかない。

私は自分を見つめて精神的な作業をする時間が必要だった。そして一人で孤独になることの多い分、出会った友達や何気なく話す現地の人とのやりとりは倍に楽しかった。

人には自分を未知の世界へ放り込んで試す、という期間が人生に一度くらいあってもいいのではないかと言いたい。
その時の経験はその後の人生においてとても力になる。

そして日本の社会の中で責任を持ったり力を存分に発揮する、という機械に恵まれなかった者の前に現れたのがたまたま旅という世界で、それは自分を試すにはとてもダイレクトな方法であった。